いつも、通っている見慣れた景色。
自転車の後ろに腰掛けて、菊丸の腰に手を回して
流れていく風景や目に染みるほどに綺麗な夕日を眺めながら、
どんなに夕日の映る川の水面が輝いていても
不二は拭い去れない不安に押しつぶされそうだった。


二人の間に会話は一つもない。
まわした腕の先にいる人物が知らない人のようで、
何だか言いようの無い恐ろしさだけが後から後から込み上げてきた。


静かにキーというブレーキ音を響かせて、車輪が回転を止める。
今にも逃げ出してしまいたい気持ちだった。
カゴから二人分の鞄を拾い上げて、家の門をくぐる菊丸の後を
不二も黙ってついて行く。


いつもならば軽快な音をたててトントンとかけ上げる階段も
菊丸はゆっくりと一段一段静かに上っていく。


一段、また一段と上るうち、不二の鼓動はどんどん早まって、
今にも破裂してしまいそうだった。
まるで絞首台に向かって一歩一歩を踏みしめる囚人の気分にも
似た、底知れぬ不安と恐怖感だけが全身にべっとりと
まとわりつくような感覚を覚え、何度かその足を止めようと試みては
諦めたようにまた一歩を踏み出す。


部屋に着くなり力任せに不二の腕をつかんで、
菊丸は乱暴にベットに押し付け、その上に跨り覆いかぶさった。

「・・っや・・・!!ちょっと、英二・・・痛い・・」

その肩を押し返そうと不二が伸ばした腕を菊丸が強く押さえつけ、
シーツへ繋ぎ止めようと握った手首に力を込めると、不二は
鈍い痛みを覚えて呻いた。

構わず、不二のシャツのボタンをむしり取るように外しながら、
足の間に割り込ませた膝の先で、菊丸は不二の雄に刺激を与える。

「・・っ!!やだ、英二・・やめて・・・」

その扱いに、不二は頬を上気させて抗議の声を上げるが、
菊丸は、まるで聞こえていないかのように、その胸の突起に舌を
這わせ、軽く歯を立てる。

「あっ・・・ん・・・ッ」

嫌なはずの行為にも自然と声が漏れてしまい、不二は唇を噛み、
それを必死に抑えようと押し黙る。
菊丸は小さく尖った不二の左胸の突起を舌先で転がしながら、
右の突起も指先でつまむようにしてこね回した。

必死にその感覚に耐えようと固く目を閉ざし、唇を噛む不二を見て、
楽しそうに瞳を歪ませる。

菊丸は、右手を静かに不二のベルトに伸ばし、それを腰から抜き取ると、
不二の両手を万歳の格好にさせ、頭上でベルトで一まとめにし、抵抗を奪う。

「ちょっ・・・英二、なにす・・・」

「これでもう、暴れられないでしょ?」

「やだってば、こんなの・・・やめてよ英二!おねが・・・」

不二が言い切る前に顎を掴み上げてその唇を重ね合わせ、言葉を封じる。
息を詰まらせるように、苦しそうな声を漏らしながら、それでもまだ何かを
言おうとするその唇が諦めを見せて大人しくなるまで、菊丸はひたすらにそれを
むさぼり続けた。

「ん・・・っはぁ・・っ」

やっと唇が離れると、不二は苦しそうに息を荒げながら
必死に自分を拘束しているベルトをはずそうと身を捩る。

「不二、あんまり暴れると痛いことしちゃうよ?」

不二の栗色の髪を掴み上げて視線を合わせると、菊丸は静かに笑いながら
そう言った。
その歪んだ笑顔は自分が今まで一度も見たことがないもので、不二は背筋に何か
冷たいものが走り抜けるような感覚を覚えて、表情を強張らせる。

菊丸は、不二の制服のボタンをはずし、ジッパーを下ろすと、
一気に下着ごと、下半身に纏っていたものを全て剥ぎ取ってしまう。
瞬間的に外気に晒されて、鳥肌が立つような感覚と、羞恥心から体が
熱くなるような感覚が同時に訪れて不二は頬を紅潮させて、瞳を潤ませた。

菊丸の舌が、胸の突起をぐるりと円を描くように舐め、そのままラインをなぞるようにへそを辿り、
そしてその下の茂みを這いまわり、ほんの少し固さを持った不二の雄を捕らえた。
その瞬間、不二の体がビクリと小さく跳ね上がり、喉の奥からくぐもったような声が漏れた。

それを一気に口に含み、舌先でその先端をぐりぐりと刺激しながら、掌でそっと包み込み
上下に扱いてやると、不二の口から徐々に甘い声が途切れ途切れに零れ始める。

「あっ・・・あ・・んっえーじ・・・やだ・・・」

「やじゃないでしょ?もっと素直に声出しなよ。いつもみたいにさ・・・。」

そう言うと、菊丸は不二の先端にある小さな穴に尖らせた舌先を無理やりに
進入させ、側面の膨らみにも軽く歯を立てた。

「あぁ・・・っ!!!やあぁ・・ッ!!ぁ・・・っ」

あまりの刺激に耐えられず、不二は大きな声をあげて、
体をビクビクと仰け反らせる。
不二自身はすでに菊丸の咥内で張り詰めていて、
いつ達してもおかしくない程にビクビクと小刻みに震えていた。

そして、菊丸は静かに不二の後ろの蕾に指先を這わせ、ゆっくりと
指をその中へと進める。

何度繰り返しても慣れない異物感に、不二の体が一気に強張る。
いつもより早いペースでその容積は不二の中を満たし、何度か抜き差しを繰り返すと
その感覚になれた頃に不二の口からまた、甘い声が零れ始め、
菊丸の咥内に捕らえられたままの先端からじんわりと快楽の証が滲む。

じわじわと追い込むように、内壁を押し広げ、敏感な場所に何度も
抉るように刺激を与えれば、無意識のうちに物欲しそうにゆるゆると
腰が揺れ始める。
前と後ろ、両方から追い詰められて、全身が快楽で打ち震え、
あと一歩で達するというその時、
一気に指が抜き去られ、そこは物足りなさを訴えるように収縮を繰り返す。

そして次の瞬間、指とは比べ物にならないほどの容積を持った固いものが、
入り口に押し当てられ、不二は表情を強張らせた。
瞳は不安の色を宿して揺れている。

「・・・英二・・・?ねぇ、なにす・・・」

問いかけると同時に、菊丸が静かに腰を進める。
ピリ、とした痛みがそこに集中し、指とは比べ物にならない勢いで
不二の内部を押し広げようとする。

拘束されたままの両手で、必死に菊丸の体を押し返そうと力を込めながら
身をよじる。


怖い。


その気持ちだけが不二の心の中を満たしていた。
痛み、という次元の恐怖というよりも、

どうしても、越えてはいけないという思いがあった。

戻れない・・・

今更何が、と言われればそれこそわからないけれど。

体と体が繋がってしまえば、もう本当に後戻りはできないと、
それだけは駄目だと、自分の中で言い聞かせていたものが。

何より手塚への想いが。
体が繋がる日など来るわけはないとわかっていても、
それだけは守っていたかった。
勝手な想いとはわかっていても・・・。

どうしてもそれだけは駄目だと、体全部が叫んでいるようだった。
必死で身をよじり、暴れた。
それでもびくともしない菊丸が、その体を押さえつけながら、
静かに言った。

「俺のこと・・・・好き?」

「え・・・。」

一瞬にして、不二の体が凍りつく。

「俺たち、もう何度もこういうことしてるよね?
そりゃ、不二に好きな奴ができるまででいいって言ったけど、
今の不二の正直な気持ち、聞きたいんだけど。」


「・・・。」


何も言えず言葉を詰まらせる不二を組み敷いたまま、
菊丸は黙ってその人形のように整った顔立ちを見つめていた。

気持ちがそこに無いことなど今更告げられるわけは無かった。
そう伝えることで、自分が失うものがどれだけ大きいかを知っていたから。
それは、決して失いたくないものだったから。

静かな室内に、時計の秒針の巡る音だけが響く。
まるで自分を追い詰めるかのように、迫るように、時を刻む。
不二は頭の中で巡る様々な言葉の整理もつけられず、
ただ、すがるような気持ちで答える。

「好きだよ・・・。」

それは、決して嘘では無かったけれど、真実でもなかった。
そして何よりも裏切りに近い言葉だった。

「その言葉、忘れないでね。」

菊丸は一瞬、曖昧な笑みを浮かべると、
静かに、けれど力強く、腰を進めた。

不二は、自分の中の何かが砕け散るような感覚と共に、
体の中を駆け巡る痛みに、切り裂かれるような思いを抱えて、
瞳から一筋の涙を零した。

 

 

 

 

 

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