ピンと張った透明感のある空気が肌を刺し、風が冷たくなり始めた11月。
ついこの間まで、紅や橙の鮮やかな紅葉を見せていた
校門入り口まで続く並木道の街路樹達も、
すっかり枯れ果てて、頼りなさげな細い枝を見せていた。


縦長で8畳ちょっとの生徒会室にある、たった一つだけの小さな窓。
鉄パイプ椅子に腰掛けて、頬杖をつきながら、
そこから見える景色をボーッと眺めるのが、最近の僕の日課。


部屋の大部分は会議のための事務用大型机が占め、入り口横にコピー機が一台。
壁一面に立ち並ぶ棚にはファイルやら生徒会会報、何かの資料のようなものが
ぎっしりと詰め込まれていた。
そして、何台かのパソコン。
それから、ラジカセが一台。
それ以外は、何も目につくものは置かれていない。


何となく、手塚の部屋に似てるなぁと思いながら
ぽつり、ぽつりと帰ってゆく生徒達の後ろ姿を見送っていた。


気づけば、日の入りの早くなった空はもう太陽が地平線ぎりぎりまで傾いていて
射るような赤い光が窓へ向かって真っ直ぐ差し込んでくる。
澄んだ空気の中、それは痛いくらいに鮮明で、自然と目を細めながら、
それでもつい見入ってしまう程に綺麗で。


時の流れも忘れて眺めていると、ふいに、静かな室内にコンコンと、
二回ドアをノックする音が響く。
頬杖をついたまま、目線だけそっちに向けると、
開いた扉の奥からは、いつもの見慣れた姿。


僕の、好きな人。


「すまない、担任との話が長引いた。」

「うん、いいよ。そんなに待ってないし。」


もう、何回目だろう。
こうして、手塚とここで会うのは。
会えなかった時間を埋めるように、僕らは毎日のようにここで同じ時を過ごしている。
そして、何度も体を重ねる。互いの存在を、確かめるように。

 

ドアを閉めた手塚が、後ろ手に静かに鍵を閉め、窓際の不二にそっと近づく。
そして、不二を囲うように窓枠に両手をついて、軽く、口付けた。
不二は、体は窓に向けたまま、顔だけを手塚の方に向けて目を閉じ、それを受け入れる。
手塚の柔らかで、少しくせのある前髪が瞼に触れ、不二はくすぐったそうに笑った。
そして、優しく梳くようにその髪を撫で、そのまま引き寄せ、もう一度口付ける。
最初は触れるだけだったそれが、徐々に深さを増し、まるで噛み付くように口を大きく開け、
互いの舌を絡めとり、吸い付いた。


長い、長い口付け。
時計の秒針が、何周したのかさえ、分からないほどに。
吐き出す呼吸すらも逃すまいと、必死で求めた。


名残惜しそうに唇が離れ、不二が乱れた呼吸を整える間に
頬、耳たぶ、首筋へと、手塚が優しく唇を落とす。
そしてYシャツの釦に手をかけたとき、不二が慌ててそれを静止した。


「待って、手塚。ここじゃ外から見えちゃうよ。」

「あぁ、そうか・・・すまない。」


そうして手塚は、不二の手を引いて事務用の少し大きな机に座らせた。
ソファーなどという、気の利いたものは無いため、
いつも、二人分の上着を背中に敷いて、この机の上でしている。


不二が机に座ったまま、手塚が屈む姿勢で再びキスの雨を降らせ、
そのまま手塚の長い指先が、器用に不二のYシャツの釦を一つ一つ外していく。
胸元の隙間から滑り込ませた指が、そっと不二の薄桃色の胸の突起を掠めると、
それだけでぴくりと体が跳ね上がった。
左手で左の突起をこね回しながら、右の突起を舌先で転がすと、
不二の唇からくぐもった喘ぎが漏れる。


「んっ・・・てづ・・・かぁ・・・。」


つぶやきながら、そっと手塚の首に手をまわすと、あやすように優しく髪を撫で、
制服のズボンの上から不二の雄に触れる。


「どうした?今日は随分と反応が早いな。」


悪戯に耳元で囁いて、すっかり勃ちあがっているそこを、2,3度撫で回した。


「馬鹿・・・なんでそういうこと言うのさ・・・。」


まるで欲求不満のように浅ましく反応を見せる自分が恥ずかしくて、不二は頬を赤らめ、俯く。
そんな様子を愛しそうに目を細めて見つめ、手塚は不二の額に口付けて
床に屈みこみ、膝立ちになって不二のベルトに手をかける。


「・・・?ちょっと待って手塚!!何す・・・」

「いいから黙ってろ。」


静止しようとする不二もおかまいなしに、手塚はそのままベルトをはずし、
慣れた手つきでズボンの釦をはずして、チャックを下ろした。
中から張り詰めた雄を取り出し、そっと口付け、咥内に含むと、
一瞬それがびくんと上下に震える。


「ねぇ・・・ちょっと、手塚・・・この体制やだよ・・・。ねぇってば・・・。」


何度か抗議の言葉を投げかけても、
全く聴く耳を持たない様子で手塚は行為を続けた。


強い快感に前かがみで俯くと、視界に映るのは自分のモノを銜える手塚の姿。
それがひどく淫猥で、でも恐ろしいほど綺麗で・・・
見ていたいけれど、直視するのは恥ずかしい。複雑な気分だった。
行き場を無くした目線が、ふらふらと辺りを泳いでいたが、突然手塚の舌の動きが激しくなり、
強く吸い上げられた瞬間、あっけなく僕は達してしまった。


「あ・・・ごめ・・・手塚、口に・・・。」


荒い呼吸を整えながら不二が詫びると、


「いや、かまわない。」


言いながら不二を仰向けに寝かせ、ズボンを下着ごと取り去る。
シャツ一枚だけを羽織った姿の不二を組み敷く形で、手塚は深く口付け、そして
不二の唇に左手の人差し指をそっと差し出すと、自然な流れでそれを口に含み、舐め上げる。
そこに中指も加え時間をかけて、丹念に二本の指に唾液を染み込ませる。


「不二、もういいぞ。」

「・・・うん。」


そうして、ゆっくりと手塚の唇が首筋を辿り、再び胸の突起を舐め上げると同時に
不二の後ろの蕾に中指が一本、進入する。


「ん・・・っ」


何度繰り返しても、なかなか慣れない瞬間。
押し寄せる異物感。
入り口付近をいじられる時が、一番違和感が強くて、
ぞくりとむず痒いような感覚が背中を走る。

そして、増やされる指。

手塚の、細くて長い、指。

それが奥深くまで入り込み、ある一点をかすめた瞬間、ビクンと体が跳ね上がった。
その様子を確認すると、手塚は集中的にそこへ刺激を与えようと、何度も指で引っかいた。


「・・・ってづ・・・か!っや・・・。」


直接与えられる、強い刺激に、耐えられず声が漏れそうになり、
手塚のシャツの肩口をぎゅっと握り締めると、それに気づいた手塚は、
右腕で優しく僕を抱きしめ、頬にキスをしてくれた。

気づけば指は三本に増やされていたけれど、すっかり指だけじゃ足りなくなったそこは、
いやらしくヒクついて、もっと強い刺激を求めていた。


「不二・・・入れるぞ?」

「ん・・・。」


耳元でそっと囁くように確認し、ゆっくりと抜かれた指。
そして、次の瞬間、指とは比べ物にならないほどの
熱い、手塚の熱が、ゆっくりと打ち込まれるのを感じて、
鳥肌が立つほどの悦びが体中を駆け巡る。

「あ・・・っ!手塚・・・。」

ぎちぎちと音を立てるように、奥深くまで入り込み、僕を満たす。
そして、規則的なリズムを持って、何度も打ち込まれる手塚自身を
少しも逃すまいと絡みつくように収縮を繰り返す僕の内壁。
少しの刺激だって逃したくは無いんだ・・・君が、僕に与えてくれるもの、全て。


「・・・っ。」


あまりに強い締め付けに、手塚の唇からも熱っぽい吐息が漏れる。
それすらも愛しくて、僕は手塚の首に両手をまわし、強く抱きしめた。


ねぇ、手塚?
僕は、君がいない数ヶ月の間
何度も独りでここに来たよ。
そうして、窓から空を見上げていたんだ。
例え、離れた場所にいても、見上げた空は
同じだと思ったから。
君も、同じ気持ちで空を見上げることがあればいいと
願いながら。


徐々に激しさを増す動きに、突き上げられる感覚に、
体全体がビクビクと痙攣を起こし、互いを抱きしめる腕に、力がこもる。
何度も、角度を変えて口付ける。
舌を絡め、呼吸が混ざり合い、唇が溶け合うほどに。
今、目の前に愛しい人がいるという喜びに、心が震えるのを感じながら。


そして、いっそう強く打ち付けられる熱に、大きく背中を弓なりに反らし、達した瞬間、

視界に映った、四角い空。

窓越しに広がる、朱と橙のコントラスト。

逆さまの、空。

 


あと数週間という限られた時間の中、あと何度、僕はこの四角い空を見上げるだろう。


独り、君を想う時間。

君を待つ時間。

君と一つになる時間。


いつも見上げていた、この、四角い空。

卒業と共に、訪れることの無くなる、この空を。


君を想い、君と過ごす一瞬一瞬が、僕にとって大切な時間で、
ここにはそれがたくさん、詰まっているから・・・。
一秒だって、忘れたくない。

 

ぼーっとそんな事を考えているうちに、手塚は丁寧に乱れた僕の衣服を整え、
学ランの前の釦までしっかりと止めてくれた。
そして、僕に背を向け、上着を羽織る。
なんとなく、その背中を見つめていると、抱きしめたい衝動に駆られ、
そっと、後ろから腕を回した。


「・・・?不二、どうした?」

「んーん。何でもないよ。」

 

 

そして、窓から差し込む夕日を見つめ、手塚の温もりと共に、この瞬間を
忘れてしまわないようにと、そっと瞳を閉じ、焼き付ける。
瞳の奥で、オレンジの光が、いつまでもふわふわと漂っていた。

 

 

END

後書き------------------------------------------------------------

君達は生徒会室を何だと思っているんだい?みたいな話です(笑)
自分的には、手塚お帰りなさい記念SS。
だって、絶対帰ってきたらとりあえず毎日したいでしょ。←そうか?

 

 

 

 

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