いまだ数センチ先にある英二の顔に呼吸すら戸惑って、
何だか息が詰まりそう。

『こういうの、興味ない?』

つい数秒前に言われた言葉の意味がわからなくて、もう何度も
頭の中をぐるぐると繰り返し回り続けてる。
返事を待っているのだろうか、英二はただ黙って、その大きな瞳で
僕を見つめているだけだった。

「・・・どういう意味?」

いくら返事を期待されたって、意味のわからない質問には答えられない。
重苦しい沈黙にも耐えられなくて、口を開いてはみたものの、英二は
何も答えず、ただ口元で笑っているだけだった。

「何で黙ってるのさ、何か言ってよ。」

その様子が何となく馬鹿にされているように思えて、微かに苛立ちを覚えた。
少しだけ不快感を込めた口調でもう一度問いかけると、英二は片手で
テーブルをテレビの方に押しのけ、僕の目の前に座り込んで、
そっと僕の頬に触れ、唇をなぞった。

「ねぇ、気持ちよくなかった?」

「え・・・?」

「キス。」

「・・・。」

「もっと、気持ちよくなれるコト、あるって知ってる?」

そう言って、僕の肩を押さえ床にそっと押し付けて、耳たぶを甘噛みした。
その瞬間、今までには感じたことの無いぞくりとした
痺れるような感覚が全身を駆け抜けて、体がビクリと跳ね上がる。

「・・・っ英二!ちょっと、やめて!」

英二が何をしようとしているのか、頭よりも本能的な所で理解したような
気がして、必死で体をバタつかせてみたけれど、
痛いほどきつく腕を押さえつけられて
身動きが取れないまま、もう一度、唇が重なった。
さっきまでの、触れるだけのとは全然違う。
あまりにも、英二が強く唇を押し付けてくるから、
苦しくて、呼吸の仕方すらわからなくて。
空気を取り込もうとほんの少し、開いた唇の隙間から、
英二の舌が割って入り込んできて、とっさに引っ込めた僕の舌を追うように
奥まで入り込み、絡みついた。
何だか生暖かい、意思を持った生き物が口の中を這い回るような感覚。

「んっ・・・んぅ・・・!!」

やっとの思いで唇を離した瞬間、荒い呼吸を何度も繰り返した。
口のまわりはどちらのものともわからない唾液でベトベトだった。
そんな僕の様子などお構いなしに、シャツのボタンに手をかけて
はずし始める。

「英二!やめてったら、ねぇ、聞いてるの!?」

自由になった手で、何度自分に圧し掛かるその体を押し返そうと
してみても、体格はさほど変わらないのにビクともしない。
肩をポカポカと叩いてみても、ちっとも動じずにシャツの隙間から
手を差し込んで僕の乳首に触れた。

「・・・っ」

誰にも触れられたことなんか無いそこは、自分でも驚くほどに敏感で、
少し英二の指先が掠めただけなのに、そこから体中に激しい疼きのような
感覚が駆け抜けた。
僕の反応を見て楽しむように笑って、首筋にキスを落とす。

「やっぱ、敏感なんだ。思ったとおり。」

「・・・え?」

「不二ってさ、ちょっと俺がふざけて触った時でも大げさにくすぐったがる
じゃん。くすぐったがりの人って感じやすいんだって。」

今、この状況でそれを言われて、素直に納得すべきなんだろうか・・・。
一瞬思考が停止して、ボーっと天井を眺めていると、
首の辺りに何だかピリリとした痛みが走る。

「ちょっ・・・と、痛いんだけど。何してんの?」

「キスマークをね、付けてみました。」

「何やってんのさ・・・。」

「まぁまぁ、何事も経験だから、初めてつけた割にはキレイにできたよ。
後で見てみ。」

「見てみ、じゃないよ。ホントいい加減どいて。」

「どかないよ。」

「もう、どいてったら!!」

本気なのか、ふざけているのかよくわからない態度にだんだん苛立ちだけが
募って、力いっぱいその体を押し返そうとした瞬間、逆に腕を引かれて勢いよく
起き上がり、お互い向かい合って座った状態で、もう一度唇が重なった。
いくら押し返そうとしても、強く頭を抱きこまれて体は離れても唇は離れない。

「むーっ、んー・・・」

もがいても苦しくなるだけと諦めて大人しく受け入れると、今度はズボンの前に手を
かけてやんわりと握りこまれた。
まだ反応こそ見せていないものの、突然のその行為に何の準備もできていなかった
体はビクリと跳ね上がった。

「っ・・・ちょっと英二・・・!!やだ・・・」

やっと離れた唇で抗議の言葉を投げかけようとすると、今まで頭を押さえ込んでいた
方の手で英二はシャツの隙間から再び僕の乳首に触れて、軽く指の腹でこね回した。
唇から覘かせた舌が耳たぶをなぞり、奥まで侵入してくる。
さっきのとは比べ物にならないほどのぞくぞくとした鳥肌が立つような、
体の奥が激しく疼く感覚に、全身の力が抜けていくのを感じた。

「ん・・・っ、いや・・・ぁ。」

思わず無意識に口から吐息ほどの声が漏れた。

「ねぇ、不二。気持ちいいんでしょ?こっち、堅くなってる。」

耳元で囁くようにそう言って、さっきから握りこんでいる僕のペニスを数回上下に扱いた。
気づけば半分以上立ち上がっていたそれは、擦られることでさらに堅さを増していく。

「・・・やっ、やだ・・・英二。触らな・・・で・・・っ」

「どうして?」

意地悪くそう聞いて英二はまた、何度もペニスを上下に擦った。
徐々に先端からうっすらと半透明の液体があふれ出し、擦られるたびにくちゅくちゅと
厭らしい水音を漏らすのが、たまらなく恥ずかしくて、もうこの場から今すぐに消えて
しまいたい気持ちでいっぱいだった。

いくら自分では何度かその行為に及んだことがあったって、他人にされるのは
初めてだ。
ましてこんな突然、自分の意思とは関係なしのこの状況に、だんだん恥ずかしさを
通り越してただただ泣きたくなってきた。

「不二・・・そんな顔しないで。大丈夫だから、痛いことは何もしないから、ね?
気持ちよくするだけだから。」

心配そうな顔をしながらそう言って、もう一度優しくキスをされた。
何が大丈夫なのか、よくわからなかったけれど、不思議とその言葉に安心して
しまって、ただ湧き上がる疼きを開放したい気持ちに駆られた。

すでに、張り詰めたペニスはいつ弾けてもおかしくないくらい限界に近くて、
擦られるたび、唇からはただ熱い吐息が漏れるだけで、英二の首に腕を回して
縋り付くように抱きついた。
英二は右手で僕のペニスを扱きながら片方の手で自分のズボンのファスナーを下ろし、
すでに堅く立ち上がっているペニスを取り出して、二人のそれを擦り合わせると、
ただ手だけで擦られているのとは違う、独特の肉がこすれ合う柔らかな感覚に、
全身にぞくりと鳥肌が立つような快感が走る。

いつの間にか映画はエンドロールすら終わっていて、音の無い砂嵐が画面に映し出され
ているだけの静かな室内に響き渡るのは、互いの呼吸と、時折漏れる嬌声、そして
何度も何度も擦り合わせるうちに、先端から溢れる互いの先走りが溶け合うように混ざり合い、
そこから発せられる卑猥な水音。

重ねた唇を大きく開いて、ただ夢中で互いの舌を絡め取った。
呼吸は荒くなる一方で、

苦しくて、苦しくて。

それでも、下半身から込み上げるどうしようもないくらい強すぎる快感を、
怖いくらいの快楽を、どうにか紛らわせたくて、必死でその舌を求めたけれど、
ゾクリとした感覚が背中を走り抜けた瞬間、ビクビクと何度か自分のペニスが痙攣するのを
感じた。

もう、限界。

「ん・・・えい、じ!も・・・っでちゃ・・う」

「いいよ不二、出して・・・っ一緒に、イこ。」

英二は、優しく目を細めて笑って握りこむ手にそっと、力を込めた。
その手の動きが一層早くなったその、瞬間。


「あ・・・っあぁ、ああぁんっ・・・!!!」


体の奥底から込み上げる快感の波に飲まれながら、頭の中は、真っ白。
電気が走ったように激しく体が痙攣するのを感じて、僕は英二の手の中に白濁の精を放った。

少し、遅れて英二のペニスからも勢い良く飛び出したその液体は、僕の胸の下の数箇所に
散った。

体が、火照って熱い。
瞳には、うっすらと生理的な涙が滲んでいた。

呼吸を荒げながら、全身の力が一気に抜けるのを感じた。
ぐったりと英二にもたれかかったまま、しばらく動くことは出来なかった。
英二は、優しく僕の髪を撫でながら、僕のお腹に飛び散った精液を拭い取って
くれた。

 


呼吸が落ち着く頃、徐々にはっきりとしてくる意識。
もちろん、1から順にゆっくりとなんて考えられなかったけれど、
突然湧き上がる激しい羞恥心。

半脱ぎだった服を大急ぎで着込んで、慌ててカバンに手をかけて
部屋を後にしようとした僕の手を、しっかりと掴んで英二が言った。

「ねぇ、嫌だった?」

「は・・・?」

「だから、嫌だったって聞いてるの。オレ、不二とまたこういうことしたいと
思ってるんだけど、駄目?」

「・・・っ」

悪びれる様子も無く、冷静に、且つ淡々とそう言ってのけた英二に
返す言葉なんて見つからなくて、腹を立てるべきなのか、恥じるべきなのか
それとも呆れるべきなのか・・・
そもそも何故自分達はこんなことになってしまったのかすらわからないまま、
その手を振り払って、僕は体が訴える気だるさを無視して
家までの道のりを、ただ全力で駆け抜けた。

 

 

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